内科医のオンコール、あるいは外科医の長時間に渡る執刀…医師のイメージとして「24時間勤務」というものがあります。これに対し、歯科医師は24時間勤務ということはまずありません。そもそも、歯科医師で深夜診療しているところは少なく、その代わり土日診療という開業医が増えているのは確かなようです。
ところが、大学病院や深夜当番医、夜間救急歯科センターなどでは、当然夜勤もあります。口腔外科の場合は、夜間にオペを行う可能性もないわけではありません。歯科医師の団体である歯科医師会が運営するクリニックでは、全国的に救急歯科センターを開設しています。
例えば、社団法人仙台市歯科医師会は仙台歯科福祉プラザを市内中心部(青葉区五橋)に置き、土日祝日の19時から23時まで夜間緊急歯科診療を行っています。市立病院の真向かいというロケーションですから、非常に便利です。
歯科医の専門は「歯」の痛みに対処…が一般市民の感覚ですが、最近多いのが口腔内の腫れ、火傷といった症状です。特に、無意識な火傷が治りきらないことや、ヘルペスなどの感染症といったことも多く見られます。大学病院や市立病院などでは、時間外診療(救急外来)で、口腔外科も請け負っていますので、歯科医師会が交代で開業医を派遣するなどの対応をしています。
深夜勤務が通常シフトのようになっていないのは、歯科医の領域が直接生命危機に結びついていない、という事実からです。どうしても歯が痛い、眠れないとはいっても大概の人は我慢を重ねて翌日の早朝に医院に駆け込むのが通常です。ですから、深夜勤務のある歯科医院はまずありません。
ところで最近「総合歯科」という病床を備えたクリニックや病院が出現しています。一般の歯科治療は歯科領域のみに対応するわけですが、既往症を持っている患者(脳梗塞などの脳血管障害、喘息などの呼吸器疾患、糖尿病などの疾患、高血圧症、狭心症、不整脈などの循環器疾患)の場合はさまざまな疾患に対して予防、防止が必要になります。
その際は、数回もの通院で処置するのではなく、入院処置で一気に治療してしまうのが患者の負担を減らすことが出来るのです。こうした病院は自由診療のケースが多く、国立大学の東京医科歯科大学歯学部附属病院でも60床しか設置されていません。ただ、全国の医師の中には無給でありながらも、医科歯科大学で「研修」に身を投ずる人もおり、夜勤勤務を経験する場合も出ています。